君に落ちる7日間 8

                      

LAST DAY (second)

 とても、寒い夜。その日の昼間は慌ててて、考えたら私はものすごい格好で家を飛び出しちゃってたから、一回家に帰ってから、念入りに身支度を整えることにした。したところで、いつもとすごい変わるわけじゃない。ここ最近の気持ちの低迷によるクマとか泣きはらした顔とかはそうそう誤魔化せそうにないし……。それでも何とか、見えるくらいにはしないといけないと思って。
 夜になっていちだんと冷えて来たから、一番分厚いコートを着て、耳当ても手袋もはめる。きっとそうしなくても、心がほかほかあったかくて、寒さは感じなかったかも。とにかく足が変で、もしかしたら、ふわふわ浮いた、空をとんでるみたいな状態だったのかな。なんだか気づいたら、そんな風にして用意して、なんか気づいたら、待ち合わせの場所に着いてたから。階段も道も、スポンジを踏んでるみたいだった。
 すごく早く着いた気がするのに、その人は先に待ってた。ふわふわする足で駆けてったら、笑い顔で、「待ちきれなかった」って言われてしまった。ふわっとぬくもりが広がるのを感じるように胸が高鳴る。ああ、何か話しかけられたけど、まるで聞こえないくらい、心臓がばくばくいってる。何を返事したかもわからない。きっと、もう少し落ち着いたら、全部ちゃんと思い出せるかな。今はまだ、頭の中が爆発しそうなくらいたくさんのことで溢れてるもの。
 もう少ししたら、もう少ししたらって、待ってみる。でも、いつまで経っても落ち着きそうにないから、そわそわとしてしまう。そのとき、丁度いいベンチを見つけて、座ろうってなった。隣同士に座るのは初めてで、汗ばむほどの距離の近さに、怖くなった。こんな距離に近づいて、どうやって話せばいいんだろう。ぽつり、ぽつり、お互い前を向いて会話してたけど、そのうち途切れた。どうしよう。何か話さなきゃ。突然、尋ねられた。

「好きな人はいますか」

 私は、手を握りしめた。完全に、足が震えてた。答えは、1つしかなかった。ぎゅっと目をつむりながら、言った

「あなたのことを、好きになってもいいですか」

 ちゃんと、好きになって、ちゃんと好きでいたいって、心の底から思ったから、私はその人に、告白した。もしかしたら、夢見てるのかもしれないけれどって、自分自身すら信じられないまま、私の言葉をじっと聞いてくれたその人に、渡しそびれたツリー飾りと一緒に、想いを、渡したかった。それで、立ち上がって、振り向いて、プレゼントを差し出した。もう一生、恥ずかしくて目が開けられそうにないと思うくらいの、勇気が必要だった。あまりに長い時間、無音だったから……そろりと目を開けたら、私の手には、プレゼントのかわりに、ケーキの箱が乗ってた。箱の向こうに、とろけるクリームのような笑顔があって。

「ずっと好きでいてください」

 箱を乗せた手に、そっと、触れられて。

「俺も、君のこと、好きです」

 今、私には、好きな人がいます。


Fin