君に落ちる7日間 6

                      

A MISSING DAY (DAY6)

 いいことも、悪いことも、静かに向き合えば、落ち着いて冷静に考えられるって今までは考えてた。
 でもそんなことは所詮、頭の中だけで、何でもないときにそう思ってるだけで、実際にそういうことが起これば、どうしようもなくなってしまうんだって、気づかされた。
 あれを……悪いこと、って言ってしまったら、私はすごくヒドい人だと思う。ただ言い訳すると、心の底からそう思ってるわけじゃない。申し訳なくて、私みたいな人のこと、そういう風に考えてくれて、もったいないって真実思ってる。でも、だけど、気持ちが沈んでいくのをどうしても止めることができなくて。私って最悪な人間だってわかっても、あのことがなければ、って考えてしまうのを止められないから。そう、あのことが悪かったわけじゃなくて、その後から、何もかも狂ってしまったようになってしまったせいで、そんな風に思ってしまうのだと思う。

「もう、4人で会う必要ないんじゃない?」

って、言われた。
 …渋谷さんに。
 最初は連絡先がわからなかったから、羽鳥さん経由で集まっていたけど、わかった今は、別にもう、4人で会わなくても、好きにすればいいんじゃないかって、渋谷さんは私に言った。
 それで、それで、羽鳥さんは垂坂さんが好きだから、垂坂さんとだけ会っていればいいことだし、渋谷さんは……私とだけ、会いたいって。
 そう、言われたの。
 始め、1人で待ってる渋谷さんを見た時、なんのことかわからなくって、それで、……
 なんていうか。最初は私、そんな風に言われると思って行ったわけじゃなかった。渋谷さんからきた連絡は、いつもみたいに、4人で集まるのだと思って、それで、よく確かめもせずに、はいって返事しただけだった。
 自分でも、そろそろ4人で会うのは限界だと思いつつ、返事してたと思う。羽鳥さんは疑心暗記になってるし、私も、自分で自分の気持ちがよくわからない。これ以上一緒にいたら、どうしようもなくなってしまう気がする。そういう不安が、渦巻いてたし、渋谷さんの言うこと、わかる。もう、私の存在はいらなくて、垂坂さんと羽鳥さんとで済む話になってたんだよね。
 だから、最後にするつもりだった。渋谷さんを傷つけるつもりも、誰かに誤解されるようなつもりもなくて、全部終わりにしようって思ってた。それだけ……。
 でも、私が言わなくてはならないことを渋谷さんに告げられて、どうしていいかわからなくて、なんて答えればいいのかわからなくて、戸惑って俯いてばかりの私に、渋谷さんはとてもはっきり言ったの。

『荷央ちゃんは、どうして4人の会に参加していたの』

 問われて、すごく愕然とした。まるで、痛いところを突かれたみたい。

『羽鳥さんの友達として? 別の目的があって? 俺ははっきり言えるよ』

 その言葉が、耳に痛かった。
 痛いから、私は耳を塞いでしまった。逃げたんだ。ずるいよね。ひどいよね。わかってる。だけど、私みたいな子が、あれやこれやと言ったり、もらった言葉に答えられないなんて、おこがましくって、図々しくって。わかってたのに。最初から、羽鳥さんが先で、羽鳥さんの気持ちを優先させなきゃってこと。なのに、いつからか、自分の気持ちばっかり優先して、勝手なことしてた。止められなかった。
 きっとその罰なんだと思う。その日から、来なくなったから。メール。毎日、毎日、来ることばっかり期待してたメール。垂坂さんからの、優しい言葉。それでわかったの。垂坂さん、知ってたんだって。渋谷さんがこうするってこと、知ってて、私に優しくしてたんだって。垂坂さんも、応援する側だった。全部納得ができて、それが深い絶望になった。来なくなって、気づかされる。甘い甘いクリームみたいな言葉と笑顔を、私自身に向けられるのを、馬鹿みたいに待ってる。


 学校で羽鳥さんに会った時、垂坂さん、クリスマスにシフト、入れてなかったんだけど、まさか違うよねって聞かれて、違うってちゃんと答えた。だって、垂坂さんとは、あれからメールすらしてない。ディズニーランドに行く計画も、渋谷さんとのことがあってから、宙に浮いて、誰からもメールが来ない。今となっては、羽鳥さんの勘違いすら愛おしい。
 垂坂さん、クリスマスは誰かと過ごすんだって考えて、落ち込んだ。いまさら落ち込むことでもないのに、どうすることもできなかった。落ち込むことすら、いけないのかなと考えた。
 そのとき羽鳥さんの呟きが、聞こえた。「そんなわけないか」って。確かに、そう聞こえた。
 心臓が止まるかと思うほどの衝撃だった。
 気づいたら、ぽろぽろ泣いてて、急いでその場から逃げ出してた。