白い純粋



 あの人を想うと、夜も眠れない。
 寒い、冷たい冬の夜、空を見上げて息を吐き、白くなったものが天に昇らないかななどと思いながら星を眺めても、浮かんでくるものはすぐにあの人の顔に変わってしまって。
 じん、と体が熱くなる。
 凍るように冷えた屋根裏部屋で、くるまるための薄い毛布をするっと落としても、小さな覗き窓を開いて、寒風を抱き込み冬空を近づけても、体はじんとしていた。
 じん、じん、と熱く。
 胸の奥から吐息が漏れる。
 縮こまるように体を丸めて、恋心に焼かれる胸を押しとどめたのに。
 高鳴る鼓動に包まれて、とろけてしまいそうなった。
 苦しいのにもっと苦しみたかった。
 そっと、手を伸ばしてしまった。
 届かない想いに締め付けられながらも、この手の先にはあの人の温かなぬくもりがあると想像しながら、ああ、と呟き握り締めた。
 ずるりと起き上がり始めた劣情に焼かれても、体中が情けない感情に支配されても、窓の外を見上げれば瞳にはキラキラと無垢な星たちの明かりが灯り、どうしようもない胸の内の内の内にあの人への純粋な光を消さずにいてくれる。
 小さな星たちはそれぞれに名前を持ちながら、落ちてきて、話しかけるのだ。
『ねえ、あの人のどこが好き?』
『あの人ってどんな人?』
『この前、あの人の手にちょっぴり触ったよね』
『あの人は、多分グリーンが好きだと思うな』
『きっと来週の月曜は会えると思うよ』
『あの人の笑顔、ステキだね』
『あの人に、想いが通じたらいいね』
 キラキラ
 キラキラ
 星屑の氷は切ない心を理解しあの人への拙い想いを昇華してくれる。
 醜い自分を全て吐き出してしまえば、そこにはあの人を純粋に恋焦がれている自分しか残らない。
 どろりと濁って歪んだ想いなんかないとでも言うように。
 真っ直ぐな、ただ純白にきらめく星たちのように綺麗な心。
 自分も天に輝く星の1つになるための神聖な儀式。
 だからこの部屋で、あの人を想う。
 こどもたちが、降り注ぐ。

 この想いが、星を通じて、あの人に届けばいい。

Fin