Home Sweet Home 79


 長いようで短かった冬期休業も終わり、後期が再開された。とはいえ、すぐに期末試験がきて、また長い春休みに突入する。休みが多いのは嬉しい反面、きゅうきゅうと学費を納めている身としては、1年の半分が休みでいいのかと少々複雑だ。
 賑やかな構内は新年を迎えて溌剌とした雰囲気が漂っており、掲示板や購買建物にいつもより大勢の人が集まっていた。頬に染み渡るような風が吹いても、学生たちはどこか楽しげに見える。波もその中に足を運ぶと、休講などをチェックしてから、余裕をもって1限の校舎へと向かった。
 コートを脱ぎながら教室に入ると、久しぶりの友人の姿を見つけた。1番の親友だけはどうやらまだ来ていないようである。残りの友人たちが手を振っている。
「波ちゃん、あけおめ」
「おめでと。久しぶり」
「おひさ〜。携帯壊れちゃったんだよね。お正月にメール送ったけど、エラーになってた」
「そうなの、ごめんね」
 クリスマスに電話番号を教えてもらいに行った友達だったので、事情は察してくれていたようだ。謝りつつ、波はその場で新しい携帯番号とアドレスを交換した。ちゃんとした知人が島1件だったメモリに情報が増えて、少々安堵する。
 しばらく雑談をして授業開始時間ぎりぎりの頃、ようやく親友が駆け込んでくる姿を見つけた。友人が確保していた席に一直線に飛び込んで笑顔を見せる。
「おはよ! 久しぶり〜」
「久しぶり。遅かったじゃん」
「うん、寝坊しそうになった」
「休みボケだね」
「…へへ」
 笑ってはいるが、親友の顔が真っ赤になったのを波は見逃さなかった。おそらくこれはあまり突っ込んで聞かない方がいい類いの理由だと察して、口が瞬時に重くなった。
 気づいた様子もなく、すぐに親友は波の方を向いた。
「波、元気してた!? 携帯のこと、教えてくれればよかったのに。すっごい心配したんだよ。メールとか電話通じないし、最初はどうしたのかってびっくりしちゃった。クリスマスにうち来てくれた時もそういえばあれ公衆電話からだったかも、って気づいて、みんなに聞いたから事情がわかったけど」
「ごめん。ビルの上から噴水に落っことして、大破しちゃった。中のデータも回収できなかったの」
「そうなの!? ツイてないねえ」
 まだなにか喋りたそうだったが、教授が入ってきたのでお喋りはいったん中断された。

 年始最初の授業は、波にしては珍しく、ほとんど集中できなかった。
 年末からこっち、いろいろあったお陰で、普通に授業を受けている自分や、自分の周囲の空気が、ひどく懐かしいような感慨を受けたせいだった。誰も変わりない。変わったのはここでは自分だけ。まるで波だけ1年先の未来に進んで、過去に相対してるような気分だ。困ることはないがひどい疎外感と違和感を感じて、ここに島がいたら少しは気が楽なのに、としみじみとした気を起こさせるばかりである。
 長い退屈な授業の後、ふたたび休暇中の話題となり、それぞれなにをしていたかなどと言い合う中、当然波にも同じ質問がきた。
「波は? 実家とか帰ったの」