Home Sweet Home 74


 ぽかんと、島を見上げた。なんのことやらわからなかったのだ。
「ですから、お粥を」
「この家にいてもいいとは言いましたが、僕に手間をかけていいとは言ってません」
 その手間をかけないために粥を作ろうとしてるのですが、と説明する気力が出てこない。適当に言うこと聞いておこうと返事だけ立派に返す。
「わかりました。お手間はとらせませんから、どうかあたしのことはおかまいなく」
「……」
 疑わしそうな視線が走ったかと思うと、ぶつくさとした声が耳に届く。
「夜中に薄っぺらい格好でほっつき歩くからだ」
 ああ、昨夜のことをまだ根に持っていたようだ。昨日の今日だし、まあ当然かもしれない。それで機嫌悪そうなのねと思う反面、未だ立ち去り難そうにする島がなにを考えているのかと首を傾げたくなる。
「昨日のことは本当にごめんなさい。先生も忙しいですよね、部屋の場所もわかりましたから、もう大丈夫です」
「では今日はここから出てはいけません」
「え」
「菌がついても困ります。大人しく寝ててください」
「…」
「くだらない意地なんか張ってるから風邪なんてひくんです」
 すげない言いぐさとともに、ドアが目の前で勢い良く閉められた。そのまましばしドアの建材を眺めた。この人って本当にこういうやり方しかできないんだなあと思う。菌がつくって、あたしに病原菌まき散らすなってことかな。少々がっくりしつつも、疲れた体は既に食事よりも眠りを求め始めている。だから波はもうあれこれ言わずに大人しく部屋にこもって寝ていようと諦めた。島に普通の優しさを求めることが間違っているのだ。これだって、考えようによっては、親切ととれなくもない。
 再びベッドにもぐりこむと、布団は暖かいはずなのに、ぞくぞくと寒気が増した。ああ、これは本格的にやばいね、とまぶたを閉じる。もう眠ってしまおう。とにかくなにもしないで寝てるのが一番だ。そのうち風邪菌の方から飽きて出てくだろう。


 しばらくすると、熱が出てきたのか頭の痛みが強まって、体は震えるほどになっていた。
 節々が悲鳴を上げていて、寒い寒いと思っていたのに、時間が経つと今度は汗びっしょりになるほど発熱する。そんな状態と時々浅い眠りに入ったりを繰り返していると、控えめなノックの音がしていることに気がついた。
「…はい」
 やっとの思いで返事をするも、しんとしたまま動きはない。病人なのにわざわざ起きてドアを開けてやらねばいけないのだろうか、とだるい体を放置していると、ようやくそっと開いたドアの隙間から、つつっと島の頭が覗いた。
「?」