Home Sweet Home 55


 島の家から一番近い神社に向かった。
 さすがにすごい人出で、島のように着物を着ている人も大勢いる。既に参詣を済ませた人と、これからの人とで境内はごった返しながら、2人はまるで他人の如く無言で参拝を済ませた。
 その後、大して信心もないが、波はおみくじでも引いていこうとおみくじ所に立ち寄った。お賽銭が5円でおみくじが100円とは大奮発もいいところだ。島が父親のように後をちょこちょこついてきて、波が引くのをじっと見ている。
「あ、大吉だ」
 正月で増量してるのかもしれないが、それにしても嬉しい。今年こそは強運をつかんでやるから見てなさいと、誰に言ったものか、波は上機嫌で胸を反らす。
「島せ――さんも引いてみられたらどうですか」
「はあ」
 自分が大吉だったものだから、つい促してみた。だがどうしようか迷う姿を見せている。「正月の縁起物なんですから!」と強引に押し進めると、島は変な顔をしながらも100円玉を取り出して、のろのろ投入した。まだ戸惑うような顔をしてるので、まだですか、と波が目で促すとおっかなびっくりおみくじ箱に手を入れ、こっちがじりじりするほどゆっくりと出している。そのうえなかなか中を開こうとしない。
「早く開いてくださいよ」
「……代わりに見てください」
 一瞬呆れた声を出しそうになりつつも、波は黙って言う通りにしてやった。ためらいもなく開けたおみくじは、なんと凶であった。
(正月に…)
 逆にこんなものを引ける方が縁起いいんじゃないのか。そう伝えてやりたいが、怯えてる島が可哀相になって、仕方なく自分のとこっそりすりかえて見せる。
「ほら見てください、大吉ですよ。良かったですね」
 にこやかに告げ、ささっと凶のおみくじを近くの枝に結びつけてしまう。
 途端に島はムッとした顔をする。
「なんで結んでるんです」
「――おみくじって、引いたら結ぶんじゃないんですか」
 空惚けてみせるが、勝手なところだけ島は常識人であろうとする。
「悪いものだけが一般的でしょう」
「そんなのローカルルールです」
「見せなさい」
「枝に一回結んだもの見るなんて、縁起悪いですよ。それにもう、どれだったか覚えてません」
「あなた、嘘吐きましたね。どうせ僕のおみくじは大凶とかそんなだったのでしょう」
 なんて後ろ向きな人なんだろう。よりによって大凶だなんて。波は島が端正な面立ちを歪めているのを眺めているうちに、言いようの無い気持ちになった。
 自分はもっと酷い目にあって、苦労して、それでも前向きであろうと必死だっていうのに、この人は…。島という人間は、びっくりするくらいキツい言葉を吐く反面、言葉の中にこうした脆さが垣間見える。人には前向きになれと強気に言うくせに、なぜ己に対してはそう弱腰なのだろう。それが時として波の中の弱点を突かれたような気持ちにさせるのが、すごくもどかしい。
 「僕は覚えてます」などとおみくじをほどこうとしてる手首を波はぎゅっと上から押さえつけると、渋面の島を睨みつけた。
「先――島さん!」