Home Sweet Home 51


 それから島はすっかり缶詰だった。
 集中してるのだろう、殆ど部屋から出てくる気配もない。波も邪魔しないよう、調べ物や宿題のレポート、年明けの予定などを考えたりして静かに過ごすようにした。火事以降、手帳は予定だけでなく買い物記録や家財チェックでぎっしりだ。宿題も若干あるし、でも年明けにはそろそろ短期バイトを入れたい。どうするかこちらも忙しなく計画を立てる。
 食事はまた島の分も作ろうかとも考えたが、食べてることを忘れるくらいの人間を邪魔するのも忍びないので、食べたくなったら食べられるよう、作り置きできるものを多めに作って置いておくことにした。干渉をなにより嫌う島だから、なにか言われたら自分の分だと言い張ればいい。
 結局年末年始の予定は聞けず終いに終わったが、島が実家に帰るにしろ帰らないにしろ、波は大人しくしていればいいことだと諦めもついた。
 そもそも帰ってのんびりしてる余裕もないのかもしれない。年が明けたら慌ててちょっと実家に顔出すとか、そんな風な感じなのだろう。
 そう考えて、波は自分ひとりの年越しプランを立ててみる。せっかくこんな眺めのいい所で過ごせるのだ。気持ちだけでも贅沢に過ごしたい。

 忙しさもあって、日が経つのも早かった。気が付けばもう大晦日を迎えていて、何気なくつけたテレビがカウントダウンだのなんだので大盛り上がりなのを、他人事のように眺める。
(先生のこともう3日くらい見てない気がするけど、大丈夫かな)
 相変わらず食事を取っている気配がない。波がなんとなく用意しておいた食事も手をつけてないどころか、ケータリングを頼んでいる様子もなかった。さすがに餓死はしてないよね。大人だし…と思いつつ、食べてるか食べてないかも覚えてなかったら…といささか不安になる。
 迷った挙句、波は台所に立った。実は先日からちょっとずつ、おせちの準備をしていた。とは言っても、大したものはない。インターネットで作り方を調べた、煮物となますとをほんのちょっぴりだけ作って、お正月気分を味わおうと思っただけである。あとは当日の朝、紅白かまぼこを切って、特売のブリを焼いてお終い。ささやかなひとり正月の贅沢。足りない分はお雑煮で乗り切る予定。こういう時おもちはお腹にたまるから助かるなどと似つかわしくない場所で感嘆する。
 大晦日の今日は、年越しそばを茹でるつもりでいた。もう夕方で、そろそろ準備を始めようかと思う。
(おそば…)
 さすがにそばは茹でて置いておけない。どうしようかなあ…と迷っていると、久しぶりに人の動く気配を感じて波はあっと振り返る。
「あ、先生……!?」
 思わず声をかけたが、波は驚きに声を失った。