Home Sweet Home 41


 どうにかこうにか様々な折り合いをつけながらの生活は、滑り出しの障害や気まずさの中でも、なんとか動き始めた。
 どうせ短期間のことだしという前向きな考えと、基本的な生活方針さえ決まった後は波も島に対してなにも口出ししないのが理由だろう。島の方も相手は口うるさい世話焼きタイプではないという希望が見えて少し落ち着いたようだ。波はルールさえあれば余計なお節介はしないし基本放置するタイプである。そう気付いてからは、多少寛いだ姿を見せるようになった。
 それにしても島は試験準備や論文などで部屋に篭っていることが多く、たまに出てきても食事や風呂、トイレなど必要にかられてのことが多い。そんな島の無機質な生活の中で波が唯一おかしみを見つけ出したのは、おやつの時間である。

 それは、年末で煙たがられがちのなか大家とアパートを行き来する波が戻ってくると、いつの間に買ったのかわからない美味しいケーキや焼き菓子が用意してあることだった。チョコレート菓子で有名な店の薫り高いコーヒーと立派なケーキだなんだを波の分として置いておいてくれるわけだ。
 始め手をつけないでおいたら、稀に天岩戸を開けて出てくる島に食べないんですかと問われて、初めて波の分だと知った。
 そんなにお気遣い頂かなくともと遠慮すれば、
「甘いもの、必要そうだったから」
という微妙な回答が戻ってきた。
 なにか。あたしは血糖値不足のストレス女ってことかい。
 少々しらっとするも、島がじっと見てるので大人しく頂いた。どうも島は、食べ物で解決を図ろうとする癖があるように感じられた。身なりはきちんとしているが部屋に篭もっていることの多い島のことだから、きっとコンシェルジュかなんかにあの馬鹿馬鹿しい鍋のように注文しているに違いない。島が甘党には見えないし、いつも波の分しか用意がない。そしてコンシェルジュはその名にあやまたなかった、菓子はどれもこれも素晴らしく美味しいので確かに気分がほぐれてる。ま、頼んでくれるのは先生だから先生に感謝するか。そう思って島を見ると、いつの間にかリビング横の書斎で雑誌を広げてる。それが波の観察を誤魔化してる姿だと気付いたのは、それが連日なせいだった。
 どうして急にこんなサービス満点になったのかしら。
 気遣うなと言う割には先生の方が気遣っている。しかも、雑誌を読むフリをして、こっちが食べてる様子を観察する必要がどこにある。
 色々ツッコミどころ満載だが、聞けば島は逃げてしまうだろう。そういう人間だとうすうすわかった。だから波はなにも言わないでいるしかできない。
(あ〜でも、これも高いのかなあ…)
 クリスマスに食べ逃した1200円のケーキ同様、きっと高級で波なんかが知らない高級菓子メーカーなのだろう。
 このコーヒーも、この間店でチラと見たら、普通の倍の値段はしていた。インスタントからしたら数倍のお値段だ。だが香りがとってもよくて、わからないなりに美味しいとはわかる。

(もう、こんなことされたら、元の生活に戻りづらい上に、申し訳なくなっちゃうじゃん)