Home Sweet Home 27


 こっちの買い物についてくる気だったことに驚愕して「い、いえ、ひとりで充分です」と遠慮すると、島は途端に安堵したような表情を見せた。嫌だったらなおさら無理しなくていいって! 女の子の買い物だ、男性に見せたくないものだってあるし、波だって島についてこられたんじゃおちおち買い物していられない。
「ではここでずっと待ってます」
「はっ!? …えーと、あの、別にお好きなとこ行ってて下さい。待ってる必要ないんで。ほんと、電話しますから、携帯の番号教えてください。あたしの携帯は壊れちゃってありませんけど、どっかからかけますから」
 そう告げると島の顔が再び憮然とした。
「携帯なんて持っていません」
「嘘っ!」
 そりゃまあ世の中に携帯を持たない頑固者もいなくはないだろうが、まさかこんな身近にいようとは思いも寄らずに波はちょっと声をあげてしまった。島は不機嫌そうに「別にこれまで困ったことなど一度もありません」と言い張った。
「あ、そうですか……じゃ、どうしよう」
「6時間後にここで、というのはどうですか」
「6時間!?」
「短すぎますか?」
「逆です! そんなに時間かけませんから!」
「そうですか? はあ、ではとにかくここで待ってます」
 ついてこられても困るが下手に待たれても困る!
「わ、わかりました、3時間にしましょう! 3時間後に今からお教えするコーヒーショップで待ってて下さい。それまでには急いで終えますから、それだったらいいですよね!」
 島の感覚がイマイチつかめない波は、仕方なく妥協点を見つけたつもりだった。冷たい合理的な人間かと思っていたが、プライベートでは意外に忍耐強いのかなんなのか、他人の買い物を6時間も車中で待つなんて正気の沙汰じゃない。
 波の驚きなんて考えもしてない島は、さっさと財布からなにかを取り出す。
「支払はこれを使えばいいでしょう」
 そういって渡されたのは、どう見てもブラックカードだった。波はギョッとして島を注視した。この人一体、どういう人間なのだろう? ただのお金持ちだって持てるとは限らないものを、普通の教師であれば尚更持てるはずがない。波は身震いした。
「あ、あの、カードなんて…」
「お金がないんだから仕方ないでしょう。現金たくさん持たすわけにはいかないし」
「でも、このカード」
「僕の分は別にありますから、心配しないで結構。それに別にプレゼントするわけではないのだから、後で返すことを考えてちゃんと使って下されば結構です」
 僕の分は別にある!? 波は怖くなって、明日銀行が開いたらとにかくすぐに返せるだけお金を返そうと冷や汗を拭った。島の経済感覚に慣れてしまったら、なおさら元には戻れない予感がする。
 一体島がどういう人間なのか、益々判らなくなった。