Home Sweet Home 26


 先ずはなにが必要だという話になって、波は慌ててリストアップを始めた。
 考えると、考えなくても本当になにも持っていないに等しい状態で、身の回りのものなら全て必要と言って差し支えないほどである。それじゃあともかくなんでも揃うところへ行こうとなった。
 買い物には島の車で出かけることになった。2度目となる乗り心地のいい皮のシートにそっともたれると、島は勝手に目的地へと向かう。どこに行くのだろう。買い慣れた場所がいいが、島の手前あまり我が侭も言い出せない。結局着いたのはどうして車で行ったのかもわからないほど近い駅前で、さっさと車から降りてしまう島に波が「ここですか?」とおずおず問うと「ここですが」と素っ気ない回答が返るだけ。おまけにさっさと路上のメーターにお金を入れ始めてて、波を慌てさせる。
「その、買い物するならもう少し下世話なところにして頂けるとありがたいのですが」
「下世話?」
 島の眉間の皺が深くなり、怒ってるのかと身構えたくなるような鋭い視線が飛ぶ。
「車で来るにはちょっと近すぎませんかね…」
「荷物がかなりの量になるでしょう。送ってもらったら、今日困るでしょうし」
「そういうことではなくてですね」
 頭いいくせにこんなに察しが悪いのはお坊ちゃんだからかしら。困ったように波は周囲を見回してみる。店はたくさんあれども、どれもこれも高級店ばかり居並ぶ通りで、これじゃあなにも買わずに帰るしかなくなること必定だ。
「先生のお買い物が先にあるのでしたらおつきあいさせて頂きますけど、あたしはここで買えるようなものはありません。できれば、学生でも気兼ねないエリアに行って頂きたいのですが」
「それは購買のような?」
 また例えが微妙すぎて意味がわからない。波は本気か冗談かわからない島の言葉に戸惑いつつも「まあそんな感じで。もし良かったら場所ご案内します」とさりげなく提案してみた。島は意外にあっさりOKしたので、ホッと胸を撫で下ろした。再び車に乗り込んだ島は生真面目に尋ねてきた。
「それは僕のような大人が行っても平気ですか?」
 なんて杓子定規な人なんだろう!
 それでも辛うじて返事できるくらいには、波は大人だった。
「……はい」
「わかりました」
 そうして波の指導の元カーナビを設定し終えると、さっさと発進する。もう波の目に島はベータ版のアンドロイドにしか見えず、奇妙な沈黙が続く。
 駐車場を探すのにひと苦労して、どうにか買い物ができる段階になると、波は軽い気持ちで提案した。
「先生は良かったらお好きなところに行っててください。あたし、適当にくるっと買い物して、終わったらお電話しますから」
「……ついて行かなくていいのですか?」
 ついてくる気だったのか!