Home Sweet Home 21


「反省はいいんです。問題はあなたです。こんな状況になってまでどうして他人に迷惑かけるのですか」
「……」
「親とか親戚とか、他に幾らでもいるでしょう。天涯孤独ってわけでもあるまいに」
「……」
「……」
「……」
「いるでしょう」
「……」
「いないんですか」
「……」
「……」
 島の顔が怒った顔からしかめ面へと変わった。波としては微妙に言いにくかっただけだったのだが、彼なりに気まずさを感じたのかもしれない。波は慌てて付け足す。
「い、いないわけ、じゃありません。ただ…」
「ただ?」
「このままだと、学業を続けられないんです…大学行くこと、反対されてるので」
「では今までどうやって通ってたんですか」
「高校時代にアルバイトで貯めたお金で受験から入学までのお金は賄って、学費は奨学金です」
「もう通っていてもまだ反対されるのですか」
「今ほぼ絶縁状態なので…でも絶対こっちへ残るためのお金なんて絶対貸してくれません。逆に足元すくわれるに決まってます」
「他に手段はないんですか」
「……保険が」
 波は唇を噛み締めた。
「保険がおりればなんとかなるはずなんですけど」
「で、それ以外の手持ちのお金は」
「……買い物したばかりで…年末が近いからあんまお金がかからないと思って……家賃も払ったばかりで暫く極貧生活を覚悟してたんですけど……家が焼けちゃったから…銀行の営業がある日じゃなければキャッシュカードの再発行は出来ないですし……再発行したところで貯金は…あんまりないんですけど…」
 恥ずかしくて最後は小声になってしまう。
 島は呆れたように眉を動かしただけだった。
「……時間を下さい」
 突然島に言われて、波は驚いた。
「なんの時間でしょうか」
 でも島はそれには答えず、苦悩の表情のまま部屋の奥へと歩き出す。
「クリスマスに女性を家にあげてしまうなんて…人生最大の汚点だ!」
「っ…(なにそれ)…」
「あなたもとにかくこっちへ来て座ってください。そこに突っ立ていられたら目障りです」
 カチンときた。
 本当は波だって島みたいな顔立ちの男に頼りたかったわけじゃない。そんな人に借りを作るなんてこっちの方こそ人生最大の汚点だ。しかし作ってしまった以上、迷惑をかけている以上は、言い返せないじゃないか。
 忌々しい一言に悶々としながらも、黙って従うしかなかった。
 外はすっかり暗かった。島は嫌みたらしく書斎にこもってしまう。仕方なしに波は窓からの美しい景色を眺めていると、自分に起きたことが遠い世界にしか感じられなくなった。もし自分にお金がたくさんあったら、あたしだってこんな景色の見える部屋を選ぶかもしれない。バルコニーから良く見てみようと、書斎を窺いつつ波はそっと出た。風が冷たくて長時間はいられないが、ビルやシンボルタワー、車のテールランプの流れはオレンジ色の暖色を放っている。
 見ていたら、お腹が空いていることに気がついた。そう言えば今日も朝食だけでろくになにも食べていない。なんだかんだ言ってもお腹は減るんだよね。溜め息をついて部屋の中に入り、どうしようか迷っていると島が書斎から出てくるところだった。
 波は思い切って言った。
「先生」