Home Sweet Home 16


 訪れた結果、1軒目は不在、2軒目は彼氏と半同棲と知ってなにも言い出せなかった。2軒目でとりあえず残り2人の電話番号だけ聞くと、すぐに辞去して公衆電話を探しに走る。そもそも公衆電話自体がない。選挙権もらったら公衆電話を増やしてくれそうな人に投票しよう。そう思いながら順にかけてみる。が、結局全然繋がらなかった。そういえば家族で海外に行くとか言ってなかっただろうか。帰ってくるのを呑気に待ってられるほどの猶予はない。

 なんで真面目なあたしがこんな目に遭うんだ、学業もなにもかも人一倍努力しているのに。

 不幸時に本当の友達が見えてくるとは聞くけど、友達以前の問題じゃない? イライラと足を動かしながら、次の手を考える。それに実際行動してみて思うが、友達とは言え「突然だけど今日から無期限で一緒に住まわせて」と頼むのは非常に心苦しいものだった。なんで実家に頼らないのという話になるし、いつも自分だけが頼りだった波にとって、プライベートで迷惑をかけることは性格的に難しかった。最後の頼みは昨晩行った3軒目だけ。あそこなら、半同棲だろうが実は結婚してようが構わない。とりあえず先に電話をかけてみると、今日は在宅だった。やった! 波はこれから行くということだけ伝えると、よろよろと昨日も歩いた道を辿っていった。朝から歩き回って既に足が棒のようで、本当はもう1歩だって歩きたくないのを必死に前後する。
 ピンポンを押して温かい友が出てきた時の嬉しさは格別だった。こんなに嬉しいものだとは知らなかった。感極まりながら、波はこの不幸を親友に話そうと意気込んだ。ところが。
「ああやっとつかまった! もう、昨日はどこ行ってたのよ」
「え? わたしずっと家にいたって。あ、今……いるけど、あがってよ」
「…いんの?」
「う、え、まあ…クリスマスだし」
 そうだ今日はクリスマスイブだった!
 波は鬱々とする心を隠すことが出来ずに、あからさまに嫌な顔をした。
「アイツいんのか…」
 アイツとはもちろん親友の彼氏のことだ。でもまああの男なら邪魔してもいっかな。あたしに文句言える立場じゃないもん。
 そんな波の心を知ってか知らずか、出迎えた友人は安堵したような表情で続ける。
「来たのが波で良かったよ。実はね、昨日夜中に変な変質者がうろついて、ドアを何度も叩かれたんだよね」
 靴を脱ぎかけた足がピタリと止まる。
「…変質者?」
「聞いた話だとさ、暗〜い闇の中両手に変な紙袋いっぱい持ってて浮浪者みたいだったって、それがドアの前で『泊めてくれ〜泊めてくれ〜』って言ってるんだよ。丁度ホラー見てる時だったから、わたし怖くて部屋に籠っちゃったよ。そしたら近所の人通報しちゃって。警察が来てもう散々だった。あ、スリッパ履く?」
 それはきっとあたしです、とも言えず、人相書きも出回ってるかもとまで言われて真っ青になった。その時例の生意気な彼氏が出てきて、ひとり? などと言ってきやがった。あれは「1人」じゃなくて「独り」って口調だった。ちょっと…いや大分頭がいいからって、この男は無礼にも程がある。なにさ、誰のお陰でこの子と付き合えてると思ってんのよ。腹が立って全部ぶちまけようとした瞬間、ふわっとした親友の蕩けそうな笑顔を目にして、波はぐっと詰まった。