Home Sweet Home 13


 翌朝の目覚めはすっきりとしていたので、起きるそうそう波は見慣れぬ部屋に驚いた。
 かなり疲れていたのだろう。昨晩はベッドに入ると色々と思い悩む前に眠ってしまった。そのお陰か今朝はまだ朝と呼べる時間にすうーっと目が覚めて、いつもと違う景色に驚き、そうか島の家に泊まったのかと妙に納得した。
 窓からは午前中の白い光がブラインドの隙間を通して差し込んでいる。東向きの部屋のようで、目覚めにはいいのかもしれない。うんと伸びをして、起き上がる。
 波はぼんやりとしたままパウダールームへと向かった。2つある洗面ボウルのどっちを使うか迷い、選んだ方で顔を洗ってさっぱりしてから気付く。我が物顔で洗面所を使うあたしって、ちょっと図々しい? そんな風に恐縮してみたものの、御丁寧に用意されていたタオルで拭いた後だったので、諦める。島には多分昨日で見透かされているだろう。とりあえず支度して大人しくしてよう。
 ついでにコンタクトを入れて鏡を見ると、今度は自分の格好に慌てた。
 最悪の交際経験ならそれなりにあるが、男物のパジャマなんて着たのは初めてだった。やっぱり男女差はある、袖も身幅も丈も余っていて、開襟の胸元が涼しくもあり寂しくもある。
 パジャマを見ていたら、自分の立場を思い出して、急にものすごく恥ずかしい気分になってきた。
 今朝になってみてようやく己の大胆さが身にしみてきたらしい。波は1人赤面すると大急ぎで現状把握にかかる。
 辛うじて知人の、それも大学の准教授の、しかも男性のマンションに図々しくも転がり込んでしまった自分って一体。
(結構気が動転してたんだなあ…)
 火事や泥棒にあったことよりもむしろ、島の家に泊まったことの方が驚きに値する。そう考えると、冷たい島の態度も納得できるし、それでも泊めてくれた親切に感謝しなくてはならないのだろうなと肩をすくめるしかできない。
 すぐにでも挨拶しようとパウダールームのドアを開けたところで、すっかり身支度の整った当人に出くわして、波は再び慌てた。
「おは、よう、ございます…」
 しかし島は波を一瞥するなりしかめ面になり、そっぽを向いた。やっぱりまだ怒ってるのかと不安になる。
「ええと、洗面所、お借りしました」
 島と会ってから、恐縮ばかりだ。波がお辞儀してそう言うと、島は子供っぽいとも思える渋面で「おはようございます」と言った。なんだか会話がちぐはぐしているなあと頭の隅で思う。
「あと、タオルもお借りしました」
「いちいち断らなくても、結構です。朝食の用意できてますから」
「え!」
 島はなにも言わずにそそくさとリビングの方へ行ってしまった。波を呼びに来ただけなのだろう。慌てたが自分がまだパジャマなのを思い出して、急いで部屋へ戻ると時計は9時前をさしていた。島は一体何時に起きて朝食なんて用意したのだろう。波ははっとして両手を胸に当てた。いやだあたしノーブラじゃない。冬だというのに体中が火照って熱かった。急いで身支度を済ませたところで後の祭りだった。